引っ越すために借家を見て回っていた。家を購入することも視野に入れていた。アメリカでは家は買い換えていくのが普通なので、軍の仕事の期限の3年しかいないとしても売却していける。
気にいった家があり、2人で喜ぶ。
ハワイに住む。家を買う。
病気でなければどれほど嬉しいことかと思う。
抗癌剤が始まる前にオンコロジー(腫瘍科)のドクターとのアポイントメントがあった。
手術をした側の脇の下も触診している。なにかグリグリと指に当たる豆状のものがあるという。 その日はそのまま帰ってきたけれど翌日電話で
「手術をしたほうが良いと思う、取り出して病理検査ををした方がいい」と。
手術はもうこりごりだ。早く薬の治療してほしい。また手術だと聞かされてショックで落ち込んだ。
やっと傷口の痛みも引いてきて、そろそろ抗癌剤だと思っていたのに。
「もう、いや。手術はもういやなの」やり切れない思い。ガチャガチャと音を立てて食器を洗った。全部割ってしまいたいような気持ちだっだ。
くやしくて、そして怖い。
次の手術は麻酔方法もロコと呼ばれる軽いものだった。 眠ってしまうものだったが、部分麻酔のようで目覚めても気分も悪くなくすぐに帰ることも出来た。
麻酔で手術はだいぶ違うものだと思った。
全摘手術の全身麻酔とは全く違う。目がさめて、その日にぴょんとベッドを降りて帰ることが出来た。
手術の後も大きい絆創膏のようなものが貼ってあるだけで傷口も小さかった。 前回リンパ腺もかなり取ったと思っていたけれど、まだまだ残っていたのだった。この腫瘍は奥の方に隠れていたらしく見逃されていた。
ショックなことに、、この腫瘍も悪性だった。
リンパ腺に転移していたガンであった。
大きさは1センチにもなっていてパチンコ玉大だ。転移していたものがそれほど大きくなっていたなんて。この時も泣いた。
ポジティブに考えよう考えようとしているのに結果はいつも悪かったからだ。 今度こそ、大丈夫。今度こそなんでもないと思っているのに、また癌だった。 しかもこのリンパの数でステージ3になり、生存率などの%もぐんと低くなった。
忘れられなかったのは
「リンパを取る手術をすると、リンパ浮腫と言ってむくむことがあるの、だから一生怪我は出来ないわよ。ガーデン仕事とかネイルサロンさえダメよ」とナースに言われ
「え??一生ですか??そんなに長く??」と聞いたら、なんとも言えない表情を浮かべて横をむいたことだ。その時に悟った。
そうか、私の(一生)ってそんなに(長く)ないんだなと。
はっきりと言われたわけではないけれど、こういうちょっとした仕草や表情に傷つくことが時々あった。
考えないようにしよう。 絶対に良くなりたい。 ボジティブな気持ちでいなければと思っていた。
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